飼 育 雑 記

ゲンジホタルについて、私の思い込みや実践で得た知識等を思うがままに書いています。

 

○ ゲンジホタルはきれいな水に棲むから飼育するにはきれいな水環境で育てなくてはいけないと思ってる方が多いのですが、飼育環境は普通の魚を飼う程度の環境で充分です。古来よりホタルの舞う場所は山奥の 冷たい清流のほとりではなく、人家が点在する小川でした。だから、その程度の環境を保てればOKです。酸素を多く含んだ水と餌と温度 が三大要素です。

 

○ 水はたっぷり酸素を混ぜてください。循環式の水槽でも水が動くことによって酸素は取り込まれるのですが、できるならばエアーを送り込んで細かな泡をブクブクとやりたいですね。どちらかというと循環よりエアーの方が必要です。水質はかなり悪化しても大丈夫です。極端に言いますと 、匂うほど悪化してもカワニナや幼虫は生きています。もっともそうなる以前に水の交換はして欲しいのですが(^_^;)。

 

○ 飼育の方法として「水を数センチ入れた広いパレットで飼育する・・・・。」などと 書いてあるのを見かかけますが、 あまりお勧めできません。これは飼育環境のよい場所(クーラー使用)の話で、一般家庭では夏の日中の高温がパレット飼育には不向きです。ある程度の水量があると急激な温度上昇を防げるし、循環装置やエアーを使うことで、気化熱が水温の上昇を抑えてくれます。 安価で確実な方法は発泡スチロール箱を使うのが便利でしょう。温度が上がりそうな日は前夜に凍らせておいたペットボトルを朝入れて蓋をしておけば夕方まで冷たい水で、ホタルの幼虫はご機嫌です。

 

○ 水温はホタルとカワニナで適温が少し違います。このことは微妙な住み分けが出来て、共に消滅するのを防ぐ自然の摂理なのでしょうか。私の経験では15℃〜20℃がホタルの幼虫にとって最高に食欲の湧く温度だと思います。25℃以上だと食欲がなくなり、30℃以上が長時間続くと死んでしまいます。逆に低温には強く、0℃近くでも生きながらえます。短期間であれば氷の中でも生きています(私の実験より)。

 

○ ホタルの産卵場所として市販の乾燥ミズゴケやガーゼを湿らせ、そこに産ませるような指導書がありますが、私は反対です。人間の勝手で飼育しているのだから、産卵のときくらい緑の生きている苔に産卵させる配慮が欲しいものです。自然に近い環境を提供することにより産卵意欲も湧くはずです し、苔が生きていることにより湿度も保てるしカビの発生しずらくなります。産卵した苔には毎日霧吹きをします。やがて黄色い卵が黒っぽくなり、 産卵から23日前後で孵化します。小さなゴミみたいなのが動くのですぐにわかります。そうしたら水槽に移してやりましょう。 全ての卵が同時に孵化しないので、孵化を確認したら苔をそのまま水槽に浮かべてしまってもいいでしょう。ちょっと乱暴すぎるようですが、もともと大自然でたくましく生きてきたのですから、この程度は苦になりません。

 

○ カワニナの飼育も大量でないのなら案外簡単です。一匹のホタルの年間カワニナ消費量は二十匹ほどといわれています。一方、カワニナの出産は年間で五十匹くらいですが、個体差も大きく、温度も大きく影響します。ホタルの幼虫水槽とは別に、カワニナ繁殖の専用水槽があれば優秀な親カワニナがホタルの幼虫の餌になることなく、稚貝を増やすことが出来ます。20℃〜25℃前後でよく産みます。 ホタルの幼虫よりも高温には強いのですが0℃近くになると、死亡率が高くなります。大きなカワニナほど低温に弱いような気がします。自然界では冬になると水底の砂にもぐってしまいます。逆に部屋の水槽の場合、冬でも暖かいとせっせと稚貝を産み続けます。

 

○ カワニナの餌は基本的に野菜くずやご飯の残りでOKです。ただし、葉野菜など水に浮くものは茹でて水に沈むようにして与えてください。きゅうり、メロンやスイカの皮などなんでも食べますが、いろいろ試して好みを見つけてください。 ジャガイモの皮なんかも大好物です(薄い表皮はきれいに残しますが)。殻を作るための石灰分も必要なのでカキ殻などを砕いて入れておくことも必要です。カワニナが足りなくなったら郊外に採りにいきましょう。三面側溝の小川などで見つけることが出来ます。三面側溝ならホタルの生息場所を荒らす心配がありませんが、根こそぎ採らずに大きな貝を採ってきて自宅で増やす工夫もしてみましょう。

 

○ 初めてゲンジホタルを育てる時はいきなり卵から飼育を始めるより、2齢〜3齢位の幼虫から飼育した方が簡単です。というのも、卵から孵化した1齢幼虫を2齢幼虫にするのが一番大変だからです。1齢幼虫がカワニナ食べて2齢幼虫になればしめたもの、それ以降は貪欲にカワニナを追って食べます。小川に放してホタル乱舞を楽しみたい方は、小川にカワニナが多数生息して流れも緩やかなら孵化したばかりの幼虫を放流しても良いでしょう。そうでなかったらある程度大きくなった幼虫を放流することをお勧めします。

 

○ ゲンジホタルは 暗くなると勝手に光ると思ってる人がいますが、自分が必要を感じたときに発光します。必要以外は光るのを止めています。光ながら優雅に飛んでいますが、危険を察知すると発光を止めます。そしてずっと離れたところで再び発光を開始するのです。 ホタルの発光は小鳥に例えるなら恋のさえずりと同じだと私は思っています。

 

○ 自然 の小川なら絶えず新しい水が流れ、時折大水が出たり人間が川掃除をしたりで、川底はきれいになっていますが、人工小川や水槽などではどうしても川底が腐敗してしまいます。ホタルの幼虫を過密飼育していると大小さまざまな幼虫がいるので大掃除は大変です。えいやっ!とばかりに大自然と同じに多少の犠牲はやむを得ないと思えばいいのですが ・ ・ ・ ・。

 

 

○ 失敗その一 ゲンジホタルを飼育しようとした昔、図書館のホタルに関する書物を読み漁ると、どの本にも図入りで「広口のパレットに浅く水を張り、小石などを少し入れて孵化した幼虫を育てる」とし、「浅く広い水面なので酸素は充分溶け込むからエアーはあまり必要ない」ようなことが書いてあるではありませんか。2〜3年ほどはそのとおりにやりました。孵化した幼虫が水中で動くのを確認しながら餌を与えて楽しみにしていると、ある日突然消えてしまうのです。生まれたばかりの幼虫はあまりに小さいので死ぬと溶けてしまうようです。結局、自分の好きなようにして育てたところ成功しました。飼育書の類は「こんな育て方もある」程度にして、失敗を経験している人から直接聞いたほうが良いでしょう。

 

 

○ 失敗その二 それは今年の9月末頃でした。その夜も各水槽のエアーを止めなが飼育状態を確認し、餌(カワニナ)を補給しました。そして翌晩も同様に水槽を覗くと一つの水槽のエアーが止まっており水槽の底には累々とホタルの幼虫が横たわっています。手に取るとぐったりして、生きてる時の弾力がありません。刺激を与えても、まったく動かないか微かに脚を動かすだけです。一瞬、蒼ざめました。この水槽は関東にお住まいの方の注文で千五百匹の幼虫が棲息しているのです。慌てて水を交換し、エアーを出しましたが水の流れに身を任せ漂っています。日中の温度は30度を超えたので水温上昇と酸素不足で最悪の状況になってしまいました。翌日の夜、恐る恐る蓋を開けて生存を確認したところ、死亡したのは1割以下で大半の幼虫は生き返りました。それでも健康状態(?)を回復するのに1週間くらいかかりました。

 

○ 冬は水の汚れも少ないし餌の心配もあまりしなくてよいので 1週間くらい様子を見ない日もあります。そんな中、1月の風の強い日に幼虫飼育している発泡スチロールの幾つかの蓋が外れていました。気が付いたときは容器の中は表面に氷が張り水中も氷片が漂う状態になっていました。エアーを出しているので外気の冷たい空気が水中で放出、泡の動きで水が攪拌された結果です。ホタルの幼虫は水温低下に強いので、カワニナが数 匹死んだだけで済みました(しかし、毎年同じことを繰り返しています)。このままだと水底まで凍ってしまうので融かさなくてはいけません。そこで思いついたのが「水道凍結防止ヒーター」です。ホームセンターで1mほどのものを 買ってきて、そのまま水槽に入れて通電すればOK。防水でサーモ付き、安価で寒さ対策には重宝します。たしか外気温3℃位でヒーターがON、 10℃くらいでOFFになるらしい。サーモ部分まで水の中に入れておけば信州の真冬でも凍ることがなく、カワニナは餌を求めてウロウロ這い回ります。

 

○ 飼育ケースを販売するホームページを見かけますが、今まで述べてきたとおり、ゲンジホタルの幼虫飼育は温度と酸素とカワニナが3大要素です。温度管理の行き届いた部屋で飼育するならともかく、市販の飼育セットはその点を考慮してないものが多々見受けられます。また、幼虫は夜行性という認識が欠けた内容も気になります。メールをいただければ私流の飼育ケースの作り方、またはオリジナル飼育ケースを実費でお譲りします。ホタルの幼虫はオークションなどで一匹三百円以上で取引されるケースもあります。確かに3齢幼虫頃までは飼育が大変ですが、もっと安くてもいいと思います。どうしても幼虫が手に入らなかったら <10匹〜100匹まで@150円(10匹単位)><150匹〜500匹まで@120円(50匹単位)><600匹以上@100円(100匹単位)> でお譲りいたします。(今期は終了しました。今秋発送の予約を受け付けております)

○ 飼育ケースではほぼ順調(?)に上陸したのですが人工小川での上陸が大変なことになっています。2週間前にわずかばかりの雨が降った夜、先頭集団は上陸を始めました。でも好天続きで多少の降雨では幼虫が掘れるほど柔らかくはなりませんでした。草むらで光っていたので、そのまま蛹になるつもりなのかもしれません。今年の春先、クロ蟻が冬眠から覚めて巣から出るとき大量の土やら備蓄した食糧の残骸などを運び出した物の中にゲンジホタルの幼虫の残骸も多く含まれていました。土に潜れなかった幼虫はアリの食料になってしまうのです。その後も雨は降らず、小川の中の大部分の幼虫はもう待てない状態です。もしかしたら毎夜少しずつ上陸してアリの食料になっているのかもしれません。年末に大きい固体を七百匹放流したのに、もしかしたら一割も羽化しないかもしれません。

○ 羽化の便りがチラホラ聞こえてきますが、当飼育園から京都の東福寺保育園ビオトープに嫁いだ幼虫たちも羽化を始めたらしく、「舞い始めた」との便りを頂きました。西は京都から北は北海道まで幼虫をお譲りしていますが、羽化の便りを頂くと安心いたします。多くの子供たちが暗闇の中で蛍の光を追うその純真な瞳を大切にしたいものです。(5月28日)

○ 孵化直後の管理は一番神経を使います。水槽に循環器を付ければ吸い込まれて掃き出されるし、エアーをボぷくぷくやると泡に乗って浮いてしまう。これがまた厄介なんです。生まれたての幼虫は小さく軽いので表面張力で浮かぶと、いつまでも浮いてしまいます。何十匹も水面に漂っているときは割り箸などでグルグルとかき回して幼虫を沈めます。また、生まれたての稚貝が孵化幼虫の数と同じに確保できないので初期給餌の成功、不成功が大量飼育キーポイントになります

 

時々加筆します (疑問などありましたらメールか掲示板へお気軽に)

 

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